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                聴 法 録 5

聴法録5-1

彼女の聴法三十年
しかし彼女には何物もない。
聴くだけが賢いのなら
浪花節道楽のおとこが一生を寄席に通うて何ほど賢くなったか
一生を聴法に使うてしかも何物もない
どこに欠陥があったか
彼女はただ我を忘れて話を聴いたのだ
我を知らずして話を聞けば 話は話に終わる
話を聴くものは多く 道を求めるものは少ない
道を求めて三十年を費やすか
話を聴いて三十年を送るか
往生極楽の話は甘く
往生極楽の道は易くして辛し

だれもが求めないのに一人求め
だれもが信じないのに一人信じ
だれもが念じないのに一人念じ
だれもが精進しない時を一人精進し
だれもが緊張しない処を一人緊張し
だれもが悲しまない世を一人悲しみ
だれもが楽しまない道を一人楽しみ
雨にも風にも 誤解にも正解にも 賛美にも
ついに一道一貫 淳一相続の行歩乱れず
もしこの人の持つものにして
真実の教えであり 真実の行であり 信であるならば
彼は必ず 出世の本懐をまっとうして不滅の歓喜ににおり
法界の無碍人となり 国のしずめとなり 世の光となり 家の孝子
となるであろう

喪心に道を獲ざる者の生活 華境無意味なること夢幻のごとし
しかるに凡夫の我心 自身に貪着して名利快楽のみに迷う
おもえ 徳無くしてほめられんよりは 道に生きて苦にあるに若かず
道無くしてほめられんよりは 道に生きて苦にあるに若かず
暗闇にあって笑われんよりは 光あって泣かんに若かず
中心の誠を欠いて信じられんよりは 喪心真実を念じて疑われん
しかるに 外に飾って内を欺き 他人を見て己を見ざる者
真実の生命の智慧光の照破によってその真相にさめ
その大慈悲に摂取せられて 永遠の道に還る
欺くべからざる喪心の声 汝を内の内につれて帰って
広大難思の慶喜におき 汝をして不滅不退の灯日の主たらしむ
かくのごとく無道議の広野に 不滅不転の白道を開顕するを
行者誤って自力我慢を混入し不転の道を失うことなかれ